第8章 竜鳴
「総長、後で調整は入れますが、だいたいこんなもんでしょう」
「ああ。いい線だと思う」
東山は再び部屋を見渡した。
「それでは、喜多川八代目総長喜多川智殿よりお言葉」
ソファに座ったまま、暫く肘掛けに右肘を載せ頭を支えたままの姿勢で、満場を見渡した。
ごくりと誰かがつばを飲む音が聴こえた。
「…俺の総長就任を納得出来ないものは居るか」
部屋がシーンとした。
「小杉」
「いいえ。私は若頭として、総長を支える所存です」
「東山」
「俺が反対する理由はない」
「近藤」
「俺も東山と同じだ。総長を支えていくだけだ」
足を組み直すと、また視線を戻した。
「なにか異議のあるやつは、タマ取りにこいや」
「総長!なにを…」
「俺も遠慮しない。いいな」
誰も、発言するものはいない。
「新人事は今日から。引き継ぎは順次やれ。翼竜会の人事は後日行う。以上だ」
小杉が立ちあがって俺に向かって頭を下げた。
皆、それに倣う。
一斉に幹部たちが頭を下げたのをみて、俺は立ちあがって部屋を出た。
草彅と長瀬が慌てて後を着いてきた。
「総長!」
廊下を歩きながら顔を向けた。
「この人事、俺には過分だ」