第8章 竜鳴
幹部会議は龍の間と呼ばれる広い洋室で行われた。
俺の座る場所の後ろには喜多川の代紋”龍の爪”の入った幕が掲げられてる。
既に、幹部たちは座っていた。
上質の一人がけのソファがズラッと並べられていて、その後ろには幹部たちの腹心が立っている。
部屋の中央の壁側が俺の席だ。
その横には議事進行席がある。
俺が入って行くと、一斉に頭を下げた。
席に座って手を振ると、また座った。
相葉と松本が手分けしてさっきまとめた資料のコピーを配った。
それぞれ目を通す。
反対はなさそうだった。
松岡、山口、国分は俺の方を見て頷いた。
草彅は意外そうな顔で紙を見ている。
智也は口を開けている。
…閉めろ…
「…では始める」
東山が立ちあがった。
「今日の議題は幹部人事について。資料はもう見たか?」
それぞれが頷く。
「何か異議のあるもの」
近藤が手を挙げた。
「異議はない。後は空席の人事を進めて欲しい」
「わかった。皆、いいか」
東山と近藤、そして小杉を中心に、人事が進められている。
俺はただ頷くだけでよかった。
袖のカフスを弄りながら、ただ部屋の中を見渡した。
全てが終わり、東山が俺を見た。