第8章 竜鳴
草彅の慌てる顔がおかしくて、思わず噴き出す。
「いいじゃねえか。東山も近藤も、あいつも納得してる」
「でも…」
「いいか、おめえには汗かいて貰わなきゃならないんだ。懲罰委員長くらい受けとけ」
「…わかりました…」
「総長!俺っ…」
今度は智也が泡くっている。
「だから、なんだよ」
「俺、舎弟筆頭なんて…」
「お前ならできるよ」
「えっ…」
「俺が前やってた役、気に入らねえってのか?」
「そ、そんなわけじゃ…」
「じゃあ受けとけ」
そのまま歩いて行く。
二人は黙って着いてくる。
その後ろを松本と相葉が着いてくる。
松本には総長付き舎弟、相葉には若頭補佐。
それぞれ幹部として名簿に名を連ねた。
これで体勢は問題ない。
後は…
やることをやるだけだ。
親父の四十九日が明けたら…動き出す。
窓の外の池には、龍が棲んでいる。
流れ出る水の音を聴きながら、龍の鳴き声ってどんなのだろうと思った。
ふと、海辺の家を思い出した。
強い海風が家の窓から吹き込んでくる音…
きっとあんな音なんだろう。
【竜鳴 END】