第8章 竜鳴
「智也は手足を3人連れて行く。城島、お前にも喜多川から誰かつけてやるよ」
「そんな…ボン…」
「お前の足になるやつ…誰か持ってけ」
「…わかりました。では、長野を」
「わかった。持ってけ」
「ありがとうございます」
「松本、お前から長野に言っておけ」
「わかりました」
すっと両肩を松本の掌が撫でていった。
「できました」
「よし…」
袷に指を入れ、きゅっと締める。
「行ってくる」
「組長…」
「ん?」
「ありがとうございました」
城島が正座して畳に手を付け、頭を下げた。
「ああ…世話になったな…城島」
初めて…城島に組長と呼ばれた気がする。
そのまま顔をあげない城島を残して座敷を出た。
智也も草彅も引き締まった顔をしていた。
「総長、準備が整ったそうです」
「わかった」
松本がドアを開ける。
先頭切って、歩いて行くと広間の前に紋付き袴姿の国分と山口が居た。
「総長、中に…」
「ああ」
襖が開け放たれる。
中に足を踏み入れると床の間を背に、東山が座っている。
今日の取持人(仲介役)だ。
ろうそくに火が灯され揺れている。
座敷の両サイドに親分衆が並んでいる。
一斉に畳に手をつき頭を下げた。
皆、紋付袴の正装だ。
「ご苦労」
一言言って東山の前に進む。
部屋の空気が、ピンと張った。