第3章 取り残された竜
「だめでしょうね…小さい組じゃあることかもしれませんがね…一家を束ねるのに女じゃぁ…他の一家の方々に侮られますからね…」
「はん…了見の狭い奴らだぜ…」
俺になんでお鉢が回ってきたのかはわからない。
総長が俺のこと、息子みたいに思ってるのは知ってたけど、東山とか近藤の叔父貴のほうがそれに近いと思ってた。
何より、若頭の小杉の叔父貴がいる。
内外からあいつが最有力候補だと思われてた。
なのに…総長が病に伏した途端、その口から出たのは、「跡目は智に…」というとんでもない言葉だったのだ。
「本当に…親父はよぉ…」
俺の心情をまるで知ってるかのような策を講じてくる。
俺が小杉の叔父貴を殺さないように…
こんなことしたんだ…
極道の世界では上に立つものは親。
舎弟は子。
子殺しは重大な罪になる。
だけど…
小杉…あいつだけは許せねえ…
「組長、まっすぐに向かってよろしいですか?」
二宮が助手席から聞いてくる。
運転席には松本が座った。
「またお前らは…いい加減幹部だって自覚してくれよ…いつまでも俺の運転手やってんじゃねえよ…」
それでも二宮と松本は動かなかった。
相葉がそっとスーツケースから拳銃を取り出した。
「これを…」
俺はジャケットを脱ぐと、ガンフォルダーをつけた。
そこに拳銃を押しこんだ。
「このレンコン(拳銃)どこで手に入れた?」
「中国です」