第8章 竜鳴
「とりあえずは四十九日だ。そこがボーダーだ」
全員頷く。
「城島は、長瀬と上手くやってくれ」
「わかってます…あいつがガキの頃から知ってるんですから…」
「おめえは喜多川の長老みたいだもんな…」
「はい?」
「なんでもね」
ふっと笑うと、城島は若い頃とちっとも変わらない顔になる。
懐かしい笑顔だ…
「お前は…戦争には参加するなよ…?」
「ボン…」
「長生きしろ。これは命令だ」
「ボンっ…そんなこと言わんでください!」
懐から、バッジを出した。
ころんとテーブルの上に転がす。
「城島…そのバッジ、明日智也にやってくれや…」
「ボン…」
「これはおめえの仕事だよ」
大野組の組長を示すバッジ…
城島は手のひらにくるむと大事そうに胸に引き寄せた。
「分かりました…」
相葉の顔を見ると、泣きそうになってる。
「バカ…お前なんで泣いてんだよ」
「なっ…泣いてなんて居ませんっ!」
「お前これから喜多川に戻れ。明日の準備参加しろ」
「わかりました」
「すぐいけ」
相葉は袖で目を拭いながら部屋を出て行った。
「やっぱり泣いてるじゃねえか…」
ふふっと部屋が笑いに包まれた。
「変わりませんなあ…あいつは…」
城島が茶をすすりながら鼻を鳴らした。