第8章 竜鳴
それぞれ、迎えにきた車に乗り込んで喜多川に戻る。
二宮は暴れまくったが病院に送り返した。
松本と城島がそれに付き添った。
「全く、手間掛けさせるぜ…」
「二宮ですか?」
相葉が隣でくっくと笑う。
「おう…どうしようもねえぜ」
「じゃあ、そんな顔しないでくださいよ」
「え?」
「総長がそんな顔してるから、二宮はゆっくり傷の養生もできないんですよ」
前を向いて無表情になってしまった相葉にやりこめられた。
「…うっせ…」
車は静かに喜多川に向かっている。
いつも乗っていた車は大野のものだから、これからはこの親父の乗っていた車が俺の車になる。
俺の車より、何倍もいいものだ。
エンジン音がほとんど聞こえない。
小杉は智也と一緒の車に乗せた。
運転席には草彅が居る。
「総長…」
そう言って相葉からハンカチが差し出された。
「なんだよ」
「涙、拭いて下さい」
いつの間にか、泣いていた。
黙ってハンカチを受け取ると、目を頬を拭った。
別になんの感傷があったわけじゃない。
親父が死ぬことはずい分前からわかっていたことだ。
なのに、なんで泣いているんだ…?
”智…お前はな、沢山の人に支えられて生きてるんだよ…”