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翼をもがれた竜【気象系BL小説】

第8章 竜鳴


”いかないでっ…翔っ…”


くらりとめまいがした。
傍に立っていた東山が俺を支えた。

「どうした…総長…」
「いや、なんでもねえ…」

すかさず松本と二宮が俺を支えた。

「座りましょう。とりあえず」

相葉が冷たい茶を持ってきた。
その間、幹部連中が俺に話しかけてきて、俺はなんでもない顔でそれを受けた。

松本と二宮が苛立った顔を見せたけど、目で制して黙らせた。
こんなところで弱みを見せる訳にはいかない。
ここに居るのは、油断すると取って食われる邪竜ばかりだ。

俺が死ぬまでは、この座は渡さねえ。
親父への恩返しなんだから。

しばらくすると人波が途切れたから、外に出た。
少し歩いて、火葬場を遠くから眺める。

「総長…休まなくて大丈夫ですか…」

二宮が心配そうに聞いてくる。

「お前こそ、大丈夫かよ」
「ええ…痛み止め飲んでますから」

アホか。そんな青い顔して…

「なあ城島」
「はい。なんでしょう」
「最近の火葬場は、煙突から白い煙はでねえのか?」
「ええ…近隣住民への配慮とかで、煙突にフィルターついてるみたいですよ…」
「へえ…」

煙突から立ち上る煙でも見てやろうと思ってたのに…

「親父は…最後までヤクザらしくねえ死に方したな…」

そう言うと、城島がぷっと笑った。

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