第7章 レクイエム
「凄いね…真っ暗…」
「そうだね…これが本当の夜なんだね…」
遠くに、灯台の明かりが見える。
でもそれ以外は、なんの灯りもない。
「これが…本当の夜の空なんだね…」
潮騒が俺たちを包んでる。
心地いい。
その音を聞いているうちに、いつのまにか二人で寝てしまっていた。
気がついたら朝になっていて。
俺も…疲れていたんだろうな…
カーテンを引いていない窓からうっすら朝の光が差し込む。
智はまだ、俺の腕の中で無邪気に眠っている。
口の端から垂れるよだれを、指で拭って舐めた。
甘い唾液の味に、我慢ができなくて唇を重ねる。
「ん…翔…?」
「智、おはよ…朝だよ」
「え…もう?」
「ん。晩飯食べなかったから、お腹減ったろ?なんか食べよう」
「うん…」
軽く朝食を済ませると、二人でシャワーして…
それから家を出て、散歩した。
まだ早い時間で、7時にもなっていない。
犬の散歩をする人や、ランニングする人とすれ違った。
おはようございますと声を掛けられ、二人でドギマギした。
「びっくりするね…でも面白い」
智が笑った。
とても透明な笑顔で…
こんなに穏やかな笑顔、見たことがなかった。