第7章 レクイエム
「やだ…やめろ…」
深夜、うめき声で目が覚める。
「組長…?」
体を起こして見ると、すごい汗をかいている。
夢にうなされているようだ。
「やだっ…矢崎っ…やめろっ…」
矢崎…?矢崎さんがなんで?
「俺は男…男なんだ…やだぁっ…」
シーツを握りしめて、組長が叫ぶ。
「いやだああっ…」
褐色の肌を滑っていく汗の玉…
…前から気になってはいたんだ…
なぜこんなにこの人は怖がっているのか。
逃げたがってるのか。
なのに自分で拾ってきた者のために、なんとか歯を食いしばってここに立ってる…
何を怖がっているのか…なにから逃げたがっているのか…
矢崎に聞けばわかるんだね?
「あっ…?!」
目が覚めたら、自分の部屋に居た。
若い頃の夢を見た。
「あ…智…」
もしかしたら…
足がとまらなかった。
部屋を走って出て、組長の部屋へノックもしないで入った。
あの時みたいに苦しんでいるんじゃないか。
そんな気がしてならなかった。
全身を震わせながら眠っているんじゃないか…
涙を流しながら夢を見ているんじゃないか…
あの人は…そういう人だから。
誰よりも繊細で、脆いのに…
誰よりも強くて、美しい。