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翼をもがれた竜【気象系BL小説】

第7章 レクイエム


次の日、二宮が俺の部屋に来た。

「どうした」
「椛島は始末しました」
「ん…ご苦労だったな」

机から帯のついた札束を2つだした。

「これで足りるか?」
「はい。十分です」
「残りはお前らのボーナスだ」
「ありがとうございます」

そのまま部屋を出ようとした二宮がこちらを振り返った。

「組長は…大丈夫ですか…?」
「ああ…ちっとばかし昔を思い出したみたいだがな」
「…そうですか…」
「気にするな。後は俺がフォローしておく」
「はい…失礼します」

二宮の背中が、暗い。
あいつだけは…組長の過去を知っている。

「二宮」
「はい…」
「大丈夫だから…」
「…ええ」

ノートパソコンを閉じると、事務所を出た。
屋上への階段を登る。
オンボロだから、ドアの鍵はぶっ壊れてる。
タバコに火をつけながら、柵まで歩く。

風が強くて火が点かない。
立ち止まると、手で囲ってなんとか火を点けた。
紫煙を吐きながら、柵に凭れ掛かる。

今日は曇っていて夕日が見えない。
オレンジの灰色の空をただ、黙って眺めた。

どうして…あの人の世界には風が吹いているんだろう。
穏やかな時間を過ごしたいという望みは、なぜ叶えられないんだろう。

それは…あの人の持つ魔性みたいなものがそうさせているのか…
どっぷりハマり込んでいる俺にはわからなかった。

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