第7章 レクイエム
「この情報、深掘りしろ。他の叔父貴達のは後回しでいい」
「はい」
一家の総長の暗殺…
これは喜多川だけの問題じゃない。
現実になった時起こる内ゲバは、相当な規模になるだろう。
ヘタしたら、極東翼竜会の消滅…
関東の勢力図が変わる。
そうなったら、関西をはじめ全国から極道が関東に流れ込むだろう。
血で血を洗う争いが起こる。
ゾっとした。
組長がそんなことに巻き込まれたら…
繊細なあの人に、耐えられるはずがない。
今日もどこかで誰か殺される。
そんなニュースを見る度、傷ついたような顔をするあの人に…
「いいか、このことは組長には…」
「わかっています。俺達だけで進めます」
「頼んだ。俺も出張る事があったら言ってくれや」
「わかりました」
二宮も松本も相葉も…
俺達のため…いや、あの人のため必死だ。
この世界から出してやりたい。
そして、好きな絵を描いて暮らしていてほしい。
心穏やかな世界…
あの人の世界になかった、穏やかな世界を…
あの人に救われた俺達が、あの人に作ってあげるんだ…
自然と頬が緩む。
あの人の事を考えると、なぜこんな気分になるんだろう。
愛してる…智…
愛しているよ…