• テキストサイズ

ごった煮短篇集

第4章 BLEACH・一護


「はずかしい、だろ……」

耳まで赤くしながら、何も恥ずかしくなどない事を恥ずかしいと訴えるその姿に、不覚にも心が奪われる。
無理矢理お菓子を飲み込んで、乾いた唇を舌で湿らせ、すぐ近くにある一護の顔を覗く。

「一護、かわいい」

小さく声にする。
すうっと一護の目が細められ、いまだ頬はうっすらと赤いまま、正面になまえを捕らえた。普段の様相と違うどこか大人びて艶めいた表情を垣間見せられ、今度はなまえが慌てる番になった。
綺麗だと言った指が自身の頬に触れる。冷たいコップを掴んだ手は同じように冷え、二人分の温度ですぐに熱を持つ。
するりと表面上を滑る一護の指が、次第にうなじへと向かっていく。

「いち、ご?」

「アンタはそうやって、俺を困らせる。そんな気なんてないくせに」

「困らせて……」

「もう限界だ。かわいいのは俺なんかじゃない。アンタの方だ」

ぶわっと体が熱を持つ。視線を反らせず、されるがままに身を委ねる。
うなじを撫でる手が優しくて心が浮き立つ。反対の大きな手で唇の輪郭をなぞられ、背中が泡立った。
こんな一護は知らない。からかいあって、皮肉も言って、でも素直で優しい彼がいつでもピリオドを打って喧嘩になるようなことはなかった。だから、彼がこの場面で嘘をついて相手を傷つけることなどないだろう。

「なまえ……」

低く消え入りそうに名前を呼び、落ちてくるオレンジ。
唇に添えられていた指が静かに離れて肩を通り、背中をなぞって腰に回る。
目を閉じることができずにいたなまえに向けた言葉と被せるように、外から大声が飛んだ。

「なまえのヤロー! 掃除やりますって自分で言ったのに、ぜんっぜん終わってねぇじゃん!」

ジン太の声だ。
ハッとしたように離れた一護の指。触れ合うことのなかった唇がくすぐったい。

「嘘じゃないからな」

一護を振り返ると、赤みの引いた涼しげな顔で隣に座っている。

「そんなの、私はよく知ってる」

まだ赤いであろう頬に手を添えて唸れば、彼の喉で笑う声。

「かわいい」

同じくして「ただいま帰りました」と浦原が帰宅を伝える。すぐに姿を現したジン太に掃除はどうしたんだと問い詰められながら、なまえは隣で笑う一護へ難しい顔をしてみせた。

……end……
/ 20ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp