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ごった煮短篇集

第4章 BLEACH・一護


浦原が帰宅するのを店先で立たせて待たせるのも悪いので、一旦掃除の手を止めて一護を商店内へ案内する。これは掃除が面倒くさくなったとかそういう理由ではない。暖かな日差しに包まれて昼寝がしたいなとか思ったわけでもない。お客様がいらっしゃったのだ、もてなさないわけにはいくまい。
店先に茣蓙か折りたたみの椅子でも出して二人でお茶なんかもいいなと思いを馳せつつ、入り口直ぐの上がり框にお客を座らせて、そそくさと奥に引っ込みお茶の支度。

冬場は熱いお茶が美味しいだろうが、今日は冷たいもののほうがいいだろうと冷蔵庫で冷やしていた緑茶をガラスのコップに注ぐ。氷は少なめに。
うっかり手が滑って自分の分もお茶を用意し、お茶菓子にはチョコレート菓子と小分け袋に入ったお煎餅。
完璧じゃないかと、いそいそ一護の元に戻る。ふと視線をあげたところで、自分から視線を逸らした彼の姿が目の端にうつった。もしや、ずっと見られていたのだろうか。

何かおかしな言動はしなかったろうかと記憶を辿るが、過ぎたことは致し方ない。
コップを倒さないように注意深く一護の隣に座り、床へ直にお盆を置く。

「冷たいお茶のがいいと思ってこれにしたけど、嫌だったら言って。温かいのもあるし、ジュースもあるし」

「いや、いい。サンキュ」

大きな手に付いている長いきれいな指でコップを手にするのを見て、なまえはお菓子に手を伸ばし

「一護の指、きれいだね」

ブーっと歪な放物線を描いてお茶が吹き飛ぶ。
飛ばした本人は、褒めたばかりの手でもって乱暴に口元を拭った。

「きゅ、急に何言い出すんだよ! つか、どこ見てんだよ!!」

「え……今お茶取った時にそう思ったから……見ちゃダメだったのか……」

褒めたのになぜか怒られてしまった。ぼうっと、今にも立ち上がって暴れ始めるのではないかという勢いで焦り怒る一護を見つめ、それでも欲の深いなまえの手はチョコレート菓子を口に放り込む。
一応、驚いてはいるのだが、一連の動作が余裕があるように思えたのか、一護は慌ただしく動かしていた手で頭をかいた。

「見ちゃダメっていうか……その、ほら、あれだよ」

モゴモゴと口の中で話す姿は珍しい。
よく声が聞こえない、と体を寄せると彼は頬を染めた。
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