第3章 FF零式・エイト(切なめ)
その背後からエイトが名前を呼ぶ声がする。
何度も、何度も。
なぜか遠くて、さっきまであんなにも近くにいたのに、感覚がなくなっていく。
そっと閉じていた目を開けば、すぐ横で傷だらけのエイトが名前を呼んでいた。
息も絶え絶えで、驚くくらい体が痛くて、苦しくて、動きづらくて、胸がズキズキとする。
なまえは息を吐き、あたりを見渡した。
ボロボロの教室。
ボロボロのみんな。
ボロボロの自分。
「痛むのか?」
優しいエイトの声に焦点を合わせる。上手く顔が見えない。
なんだか怖くなって、なまえは顔を歪めて名前を呼ぶ。
「エイト……エイト、エイト」
「大丈夫だ、俺はここにいる」
肩に回される手。近づく体温。寄り添った頬。
安心と恐怖と不安が一緒くたに雪崩込み、何が何だかわからないまま、なまえの目から涙が溢れて頬を伝った。
同時に、シンクの鳴き声が教室中を包む。
それに触発されるようになまえの声も大きくなり、体を抱きしめるエイトの力が強くなる。
「大丈夫、大丈夫だ。泣くな。……泣くな、なまえ」
宥めて背中をさするエイトは、誰よりも、ずっと大きく見えた。
……end……