第3章 FF零式・エイト(切なめ)
なまえは苦笑しつつ、エイトの手を引いて静かに教室を出た。何人かは彼女たちの行動を目で追って、黒板の前で争うおバカ二人に、呆れたようにため息。
ここにシンクが加われば、もっと賑やかになるに違いない。
その模様も見たくはあるが、なまえは大魔法陣から、チョコボ牧場に逃げ込んだ。
燦々と陽の光が降る中、なまえとエイトは人目に付かない柵の向こうにしゃがみ、バレないように背を屈めて声をひそめる。
いけないことをしているようで、心臓がドキドキと高鳴った。
ふと、隣で同じようにしゃがんでいるエイトに元気がないことに気がつき、どうしたの?と尋ねれば、ふてくされたようにそっぽを向いて腕を組む。
「男は、でかいほうがいいのか?」
「……はあ」
「……何だその気の抜けた返事は」
片眉を上げなまえを睨む。
横暴な……と思いながら、なまえはそうだなあと考える。
確かに自分より大きい方がいい。それが世の常というやつだろう。
男性の方が、女性よりも大きいと思うのは日常的で、良くある傾向にある。
しかし、その反対が嫌かと言われればそんなことはない。可愛いと思うし、そういう人が好きだと言う者もいるだろう。
そう答えれば、そんな広範囲な回答ではなくお前はどうなんだと逆に問われる。
思わずなまえは面食らう。
自分が思う範囲の答えでいいのか。それなら些か簡単ではある。
「私はいいと思うよ」
彼女の答えに、エイトは少し頭を上げてなまえを見る。
頬から目尻にかけて、淡い桃色に染まっているように見えた。
「小さくても、その人の人となりがカッコ良かったら、背の高さなんて付属品だよ。人間は中身、背が小さいから器も小さいなんてことないでしょ?」
意地悪くエイトに、ね?と首を傾げれば「当たり前だろ」と強く返された。
少しおかしくてエイトが愛しく思える。
なまえは笑って
「エイトはカッコいいよ。背なんて気にしなくても、十分過ぎるくらいカッコいい。人の痛みをわかってあげようとする考えは、とっても素敵だと思うよ」
エイトは照れ臭そうに頭を掻いてなまえの横顔を盗み見る。
真っ直ぐ前を向く彼女の表情は柔らかく、陽光にも負けず劣らず暖かであった。
柵を掴んでたちあがり、なまえはチョコボの見える檻へと近づいていく。