第6章 せめて…
いきなりのことだったので、どうすることもできなかった。
わたしは、背中を背後のフェンスに打ち付けられ、更に、フェンスに手首を縫い付けられた。
「と、トド松くん……?」
見ると、トド松くんは、熱のこもった潤んだ瞳をこちらに向けていた。
「ど、どうしたの……? 何、してるの?」
トド松「だから、言ったじゃん。僕、行動することにした、って」
「そ、それって……」
トド松「そうだよ、ちゃん。僕が好きなのは、君」
トド松くんは、そう言って、わたしの唇に自分の唇を重ねた。
そんな……まさか。
トド松くんが、わたしのことを好き?
そんな……ありえないよ。そんなのって……
トド松「…信じられない、って顔してるね」
「…………信じられないよ。トド松くんが、わたしのことを好きだなんて」
トド松「でも、本当のことだよ。僕、もう1年以上前から、ずっとちゃんのことが好きなんだ」
「そんな――んうっ」
再び、キスで口を塞がれる。
今度は、重ねるだけの優しいキスではない。舌を使った深くて激しいキスだった。
「んあっ…あ、ふ……っ、ん」
抵抗することもできず、ただただトド松くんのキスを受け入れる。
もう、わけがわからない……
こんなの、めちゃくちゃだ……
「と、とどまつく…んっ……」
トド松「……ちゃん、かわいい。目、とろんってしてる。キス気持ちよかったの?」
「ち、ちが……っ!」
トド松「カラ松兄さんと、どっちが上手?」
「わかんないよ…! お願い、放して!」
トド松「えー、今更それはないんじゃない? だって、僕の背中を押してくれたの、他でもないちゃんだよ?」
……そうか。そうだよね。
わたしが無責任にあんなことを言ったから……
トド松「だから、責任とってよ。大人しく、僕に抱かれて?」
「だ、抱かれて、って……」
トド松「ちゃんがカラ松兄さんしか見えてないのは、痛いほどわかってる。だから、せめて、身体だけでも頂戴…?」
耳元で甘い声を囁かれて、心臓にぎゅっと押しつぶされるような痛みが走った。