第6章 せめて…
午前中の授業は、筒なく終わった。
今日も、いつものようにカラ松くんとお弁当を食べようと、立ち上がった、そのとき。
ブレザーのポケットに入れておいたスマホが震えた。
急いで取り出し確認すると、トド松くんからラインが来ていた。
『お昼休みって、カラ松兄さんと約束してる? ちょっと大事な用事があるから、来てほしいんだけど…』
大事な用事?
なんだろう、それって。
けれども、昨日の今日でカラ松くんとの約束を断ってトド松くんを優先させるのは、なんだか気が引ける。
急用なのかな?
放課後なら、確か、カラ松くん、部活の用事があるって言ってたし、トド松くんと会っても問題ないだろう。
わたしは、『昼休みは約束があるから無理だけど、放課後ならあいてるよ』と返信した。
すると、ほどなくして、『わかった、じゃあ放課後に屋上に来てね。待ってます』と返事が来た。
どうやら、急用というわけではなかったらしい。
スタンプを返して、スマホをブレザーのポケットに戻す。
と、ちょうどカラ松くんが廊下からひょこっと顔を出し、
カラ松「!」
と、わたしを呼んだ。
クラスの女の子たちの目が、ぎろりとわたしのほうに向く。
明らかな嫉妬の眼差しが、わたしに一斉に突き刺さる。
一松くんは気にしないほうがいいって言ってくれたけど、やっぱりきつい……
どうして、わたしはカラ松くんのことが好きなだけなのに、こんな思いをしなくてはいけないんだろう。
わたしは、もしかしたら、カラ松くんと付き合ってはいけない人間なのかもしれない。
無意識にそんなことを考えてしまい、頭をふってその考えを追い出す。
わたしは、カラ松くんが好き。カラ松くんも、わたしが好き。
せっかく両思いになれたのに、そんなことを考えるなんてどうかしてる。
それに、カラ松くんは言ってたじゃない。わたし以外いない、って。
「カラ松くん! 今行く!」
わたしは、元気に返事をして、カラ松くんの元に駆け出した。