第2章 カラ松くんとわたし
……なんて意気込んだものの。
いざ授業が始まり教室が静まり返ると、どうしても気持ちは別なほうに行ってしまい、勉強どころではなくなってしまった。
さっき、カラ松くんとしたキスのこととか…
胸を触られたときの感覚とか…
カラ松くんの色っぽい顔とか…
それから、これからすることも…
『――じゃあ、、ここの問題を解いてみろ』
「えっ……?」
突然、先生にあてられて、わたしは我に返る。
どうしよう……ぜんぜん聞いてなかった。
今、教科書の何ページ? どこの問題?
あわあわと教科書をめくり、黒板に書かれたものと同じ問題を探す。
すると、そのとき。
すっと隣から1枚の紙切れが差し出された。
見ると、一松くんが、スナック菓子の袋を片手に、もぐもぐと口を動かしながらわたしを見ていた。
「え……?」
一松「……これ、答え」
わたしは、一松くんから紙切れを受け取る。
そこには、乱暴な字で、数字が書かれていた。
わたしは、それをそのまま読み上げる。
『正解だ。よく解けたな。応用問題なのに』
先生は、一松くんが紙をわたしに渡したことには気付いていない様子で、笑顔で褒めてくれた。
「ありがとう……てか、すごいね、一松くん。これ、暗算で解いたの?」
そっと小声でたずねると、一松くんは、「うん…」と抑揚のない声で呟くように言った。
やっぱり天才なのかも、このひと。
「今度、なにかお礼するね」
一松「別にいいのに…」
「だって、助けてもらっちゃったし。わたしにできることなら、なんでも言って」
一松「……ふーん、なんでもいいの?」
一松くんの唇が、三日月を描く。
「う、うん…いいよ?」
どうしたんだろう。何か欲しいものでも思い浮かんだのかな?
あまり高いものは買えないけど、いつも一松くんが食べているお菓子とかパンくらいなら、奢ってあげよう。