第2章 カラ松くんとわたし
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教室に戻り、席につき、次の授業の準備をする。
次は、たしか、数学だったから……数学の教科書と、ノートと、参考書と……
ひとつひとつ確認しながら机の上に並べていると、隣の席から視線を感じた。
「……?」
見ると、隣の席の一松くんが、机に頬杖をついて、じっとこちらを見ていた。
その右手には、コンビニのやきそばパンが握られており、それを時折口に運んでは、もぐもぐと口を動かしている。
一松くんは、つねに口を動かしていないと気が済まないのか、いつも何かを食べている。
それは、授業中だろうと関係ない。
パン、おにぎり、お菓子、ガム……時には、カップラーメンを食べていることもある。
でも、先生は注意しない。
……いや、できないのだ。
だって、一松くんは、そんな授業態度でも、テストの成績はいつも学年トップだから。
「ど、どうしたの、一松くん?」
あまりにもじっと見つめてくるので、気まずくなり、声をかける。
すると、一松くんは、ごくん、と口の中のものを飲み込んだ。
一松「……べつに?」
「いや、別にって……じゃあどうしてそんなにじーっと見てるの?」
一松「うーん……なんとなく」
なんとなく……まあ、一松くんらしいっちゃらしいけど。
そう、この一松くんは、カラ松くんの弟だ。
カラ松くんは、6つ子の兄弟の次男で、この学年に一松くん以外にも4人の兄弟がいる。
演劇部に入部してカラ松くんと仲良くなってからは、よくカラ松くんの家に遊びに行くので、一松くんを含め他の兄弟とも仲良くなった。