第14章 燈火の 影にかがよふ うつせみの
「ぁ…」
喉が震える。
恐怖からではない。
ほのかな明かりの中で見下ろしてくる、欲を持った男の顔。
それは風鈴の鳴る狭く小さな部屋で幾度と見上げてきた男達の、どの顔とも違っていた。
熱い炎を灯す瞳に入り混じるのは、欲望だけではない。
瞳の中に宿す蛍の姿を、慈しみ、愛しむ色が、蕩けて混じる。
「きょう、じゅろ…」
その瞳に愛されたいと思った。
その男を愛したいと願った。
「もっと、触れて…ここ、に」
柔らかな黄金色の髪に指を埋めて、引き寄せる。
求めた熱は願い通りに触れられた。
重なる唇に、感情を乗せた舌が熱く絡む。
「ふッ…ん、ぅ」
杏寿郎と交わす深い口付けは、気持ちの良いものだった。
交わる熱と熱の間で想いが膨らむように、体の芯も熱くなる。
蕩けた体の硬直が溶けていく。
一層熱を持った蜜壺が潤い増す。
押し留められていた杏寿郎の腰が、奥へと進んだ。
「ふぁッ…は、ぁッあ、んっ」
ずく、ずくと打ち込まれる。
荒くはないが体を揺さぶる確かな律動に、蛍の唇の隙間から嬌声が零れた。
「蛍…っ」
「あぅッぁ、はッ」
打ち込まれる男根による熱だけではない。
普段の威勢の良い声からは想像もつかない程、熱を帯び名を呼ぶ声。
鬼を滅する為に鍛え上げられた腕に、優しくも逃さぬように抱かれる。
その行為、その動作一つに、心が体と共に揺さぶられ熱くなる。
それは確かな快感だった。
杏寿郎の言葉通り、今目の前にいるのは鬼殺隊の柱でも、煉獄家を継ぐ者でもない。
ただ蛍の心と体を欲するだけの男だ。
それを実感すると、体の奥底が震えた。
呼応するかのように膣内が熱くなり、蜜が溢れ出す。
拒絶のような締め付けではなく、迎え入れるかのように吸い付き戦慄く。
「っ…は、」
先程とはまるで違う蛍の体の気持ち良さに、砕けそうになる腰を耐えて杏寿郎は目の前の体を掻き抱いた。
応えるように縋り付いてくる体は、組み敷けばたちまちに腕の中に収まってしまう。
鬼とは思えない程に華奢で儚く、男にはない柔らかさと熱を持つ。
その魅力を余すことなく味わおうとするかのように、蛍の膣内を犯す律動も自然と速くなった。