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いろはに鬼と ちりぬるを【鬼滅の刃】

第14章 燈火の 影にかがよふ うつせみの



「…二度目だな」

「ぇ?」


 蛍の一挙一動に、胸の奥が堪らなく熱くなる。
 抱き潰さないようにと理性を保ちながら、柔らかな片膝を抱いた。


「よもや夢現のように感じることが」


 濡れそぼる蜜口に己の欲望を添えれば、ぴくりと四肢の先に力を入れて震わせる。
 そんな蛍の姿に、優しく触れるだけの口付けを落とした。


「だが夢じゃない。今宵、君を俺のものにする」

「…うん」


 体を他人の熱に暴かれる恐怖。
 染み付いた過去に体は震えても、杏寿郎の頸に腕を絡めたまま縋り付いた。

 それが合図。


「っあ…ッ」


 ゆっくりと蛍の中へと押し入ってくる、熱く硬い欲の塊。
 指など比較にならない熱さと太さに、蛍の口から高い声が上がる。


「っ…蛍…力を抜け」

「は…ッ」


 きゅうきゅうと強く締め付けてくる蜜壺に、杏寿郎の口からも熱い吐息が漏れる。

 体にこびり付いた負の感情は、蛍の意志に反して身を硬くする。
 蛍の体内に押し入り、暴き、我が物顔で犯してくる他者の熱。
 それが杏寿郎のものだとわかっていても体の震えは止まらなかった。


「私、は…だ、いじょぶ…動いて、いいよ…」


 途切れ途切れに伝えてくる声に怯えはない。
 しかし侵入を阻むかのような膣の狭さに、杏寿郎は動きを止めた。


「蛍、」


 静かに触れる唇。
 額に、頬に、鼻先に、瞼の上に。
 軽く触れては、熱を灯す。


「怖い時は怖いと言っていい。自分を殺して我慢などしなくていい」


 優しく声を寄せて、髪を梳くように撫でて。


「今此処にいるのは、鬼でも柱でもない。蛍と俺だけだ。…君を慕い、その心が欲しいだけの男だ」


 だから、と囁く言葉に乗せて。
 杏寿郎は灯火を宿す目を細めた。


「ただ俺だけを見ていてくれ」

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