第14章 燈火の 影にかがよふ うつせみの
「そ、んなこと言ったって…んッ」
「なるべく怖がらせたくないんだ。蛍には気持ちよくなって欲しい」
「は、ぁ…でも」
杏寿郎の言い分は理解できた。
最大限に気遣って譲歩してくれている結果だ。
しかし自身のどこが感じるなどと、指摘するには羞恥心が邪魔をする。
そして何よりも。
(っ…熱い)
無骨な指は太く長いが、その愛撫は探るように優しい。
なのにその指が触れたところから、焦がすようにじんじんと熱を持つのだ。
体は未だ震えたまま。
そこには恐怖も入り混じっているはず。
なのに体が求めるのは、その手から与えられる快楽だった。
(杏寿郎、だから?)
こんな些細な愛撫でなど、今まで感じたことはない。
なのに小さくとも嬌声が漏れてしまうのは、体が恐怖とは別の意味でも震えてしまうのは、相手が杏寿郎だからか。
「…指、」
「む?」
「増やして、も…大丈、夫……ひぁッ」
羞恥は残っていたが、心底面倒だと思うことを細部まで拾い上げて共に抱えようとしてくれた。
そんな杏寿郎に応えたくて、辿々しくも伝えようとすれば電流のように走る快感。
「…これか?」
「あっそれ、駄目っ」
中指で膣内を弄られながら、親指が秘部の上にある小さな突起を掠める。
蛍の愛液で濡れた指の腹で今度はぬるぬると擦られると、先程の比にはならないくらいに体が跳ねた。
「ひっぁ、あっ」
「…ここだな」
「ぁっだめッ今、は…ッ」
皮を被った小さな陰核を、親指で擦られる度に高い声が上がる。
同時に太い指が更に膣内に押し入ってきて、堪らず蛍は腰を浮かせた。
「あッやぁっん、あッ」
明らかに快楽を得ている様子に、杏寿郎の喉がごくりと嚥下する。
食い入るように見ていた顔は無意識に下って、晒す喉元に口付けた。
くちゅくちゅと蜜が掻き乱される音に交じる、愛しい人の嬌声。
体中を巡る血が下半身へと集中していくのを感じながら、陰核を根本から擦り潰した。
「あ、んん…ッ!」
びくりと一層大きく跳ねた白い体が、ぴんと張る。
首筋へと吸い付いてゆっくりと顔を離せば、ひと呼吸置いて脱力した蛍の体が布団へと沈んだ。
見下ろして重なったのは、濡れた赤い瞳。