• テキストサイズ

いろはに鬼と ちりぬるを【鬼滅の刃】

第13章 鬼と豆まき《弐》



 ちりちりと燃えるような、小さな炎の灯火。
 それが朱色の瞳の奥に宿っているようだ。

 逆光で顔は暗いのに両の目だけはやけに赤く燃えているようにも見えて、蛍は息を呑んだ。


(これ、前にも、見た)


 あれは節分の事前集会の帰り道だった。
 節分の鬼役がどういうものか、今ならこっそり吐露しても周りにわかりはしまいと杏寿郎を誘惑した時のこと。

 あの時も強く手首を掴まれ、燃えるような双眸に射抜かれ微かな恐怖を感じた。
 杏寿郎に恐怖を感じたことなど、他の柱に比べればほぼないに等しい。
 なのに何故、あの時は怖さなど感じてしまったのか。

 一瞬だった為に気の所為かと思い込んでいたが、そうではなかった。


「…杏寿郎…?」


 恐る恐る呼びかける。
 その声にはっとしたのか、蛍の手を握っていた杏寿郎の力が緩んだ。


「っすまない。つまらないことを言った」

「え」


 かと思えば、視線を逸らして謝罪を向けてくる。


「今のは忘れてくれ」

「…ぁ、の」

「屋敷も見えてきたな!」

「へ? あ、うん」

「夜もまだ長い! 俺は鍛錬に入るから蛍は先に休むように!」

「ええっ! 急に!?」


 はきはきといつものように張った声で告げる姿も、またデジャヴ。
 あの時も鍛え直しだと蛍を連れ回し、結果最後は自身の扱きに力を入れていた。


「ま、待って杏寿郎…っなら私も鍛錬する!」

「君は病み上がりだろう! 休んでいなさい!」

「でも…っじゃあ準備の手伝いを」

「無用だ!!」


 ずんずんと進む杏寿郎の後を慌てて追う。
 こうも大声で捲し立てる時の彼は聞く耳を持たない。
 急な変わり様に混乱しつつ、蛍は不安を露わにした。


(なんなの急に!?)

/ 3464ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp