第13章 鬼と豆まき《弐》
鬼狩りにて血を流している彼らに、自分の補給の為に更に血を流させることはやはり気が引ける。
「その心配は杞憂だよ」
「え?」
「見てごらん」
蛍の心配とは裏腹に、耀哉の声は明るいままだった。
思わず顔が上がる。
耀哉の目は、蛍ではなくその背後へと向いていた。
「案ずることはない! 今までもこれからも、蛍の為なら喜んでこの血を分け与えよう!」
「ホイホイ誰のものともわからねェ血を飲むよりか、そっちの方がお前の身も引き締まんだろォ。そうやって現実睨んどけェ」
「自分で決めたことなら弱音なんて吐いたら駄目だよ。お館様の前なら特に」
「だ、そうだ。お前の心配はあってないようなもんだな」
振り返った先には、蛍より迷い無き顔で告げる柱達がいた。
蛍の僅かに残っていた不安を払拭する程の迷いの無さに、ぱちりと幼い瞳が瞬く。
(あ…なんだろう…色が、あたたかい…?)
柱の色は、常人の持つ色より尚濃く強い。
なのに何故か、彼らの体から滲み出る色に普段は見えなかった温かみを感じたような気がした。
「…うん」
ふと緩みそうになった表情に、なんだか気恥ずかしさを感じて。頭を下げてそれを隠しながら、蛍は小さな小さな吐息をはいた。
「…ありがとう」