第5章 柱《弐》✔
確かによく見れば、桜色から草色へと染まっているのは桜餅のような色。
…そんな馬鹿な。
蜜璃ちゃんの体質は、私の理解を遥かに越えたものだったらしい。
「変、じゃないかしら? 可笑しくなぁい?」
それでも三つ編みを解いた髪先を握りながら不安げに尋ねてくる蜜璃ちゃんに、向ける答えは決まっていた。
「全く可笑しくないよ。蜜璃ちゃん自身の色みたいだね」
「私自身?」
「うん」
この外見も内面も綺麗な女の子からは、撫子色(なでしこいろ)が見える。
優しくて、温かい、それでいて周りを明るくさせてくれる色。
目にするとこっちまで嬉しくなるような色だ。
「今まで出会った誰よりも可愛い色をしてる。もしまた女として生まれ変わるなら、私は蜜璃ちゃんみたいになりたい」
外も内も可愛らしい女の子。
純粋に憧れた気持ちを伝えれば、ぽかんとこっちを見ていた蜜璃ちゃんの顔が──わっ
「蛍ちゃんったら…!」
ぼわんっと一気に赤くなった。そして顔を押さえてそっぽを向いてしまった。
「蛍ちゃんが男の子だったら私恋してたかも…!」
「え。」
そ、それは止めておいた方が…私、鬼だし。
「こんな言葉でうっかり落ちちゃ駄目だよ。蜜璃ちゃんにはもっとふさわしい殿方がいると思うから」
恋に恋する肌質だから、うっかり変な男に引っ掛かりそうで怖い。
こんなに可愛い心を持ってる女の子なんだから、傍にいる時は周りに目を光らせていよう。
「そ、そう? でもそんなこと言ってくれたのは蛍ちゃんが初めてよ」
「偶々だよ。周りもきっとそう思ってる」
「そうかしら…」
「そうそう」
多分、褒めるより先にその豊満な胸に目がいくからじゃないの?
男なんて所詮そんなもの。
私だって初めて会った日、蜜璃ちゃんの胸を凝視してしまったし。
…そんな男にも、蜜璃ちゃんは嫁がせられないな。
「兎に角、口先だけ上手い男になんて引っ掛かったら駄目だよ。私、これでも多少の目利きはあるから」
欲に塗れた男達は沢山見てきたので。
「もし誰かに言い寄られたら教えてね。変な男じゃないか見てみる」
「え…っ」
ぽっと蜜璃ちゃんの頬が染まる。
そしてまたもやそっぽを向かれた。
なんで。