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いろはに鬼と ちりぬるを【鬼滅の刃】

第12章 鬼と豆まき《壱》✔



「!?」

「蛍…ッ!!」


 噴き出した影が黒い波を跳ね上げ、巨大な柱となって空を舞う。
 間一髪空中で体を捻り避けた実弥は、驚きの眼差しで地面へと着地した。
 同じく、どぷんっと大量の黒い波が落下した先は、顔を両手で覆い絶叫する蛍。
 杏寿郎の呼び声に反応する前に、瞬く間に膨張した影は蛍を渦巻き飲み込んだ。


「しま…っ!?」


 蛍と繋がれていた無一郎の体も、管を伝い黒い波で覆い尽くした影鬼が飲み込む。


「時透!」

「なんだありゃあ…ッ蛍の異能か!?」

「恐らくそうだ…! 蛍の顔が太陽に焼かれた途端、暴発するように現れた!」

「ッ」

「おい待て冨岡!」


 離れた距離にいた杏寿郎や天元達は、その波に飲まれることはなかった。
 しかし一人分の影にしては膨大過ぎる程、突如巨大化した影鬼に驚きは隠せない。

 ぐにゃぐにゃとうねり渦巻く巨大な影は、まるで火に焼かれてのたうち回る大蛇のようだ。
 明らかな異常事態に、踏み出した義勇を天元が止める。


「何をするつもりかわかんねぇが、あれには近付くな! 危険だ!」

「ッ…離せ」

「いーや離さねぇッ冷静にあれを見ろ!」

「時透も飲み込まれた…ッ助けなければ!」

「お前もだ行くな煉獄! 今俺達は日輪刀を所持してねぇだろ! 歯向かう術がない!!」

「しかし…ッ」


 無一郎だけではない。
 あれだけの異能を発生させた蛍には、明らかに異常が生じている。
 発端はどう見ても陽光だ。

 太陽光を受けた鬼は死ぬ。

 蛍は一瞬だったにせよ顔面にそれを受けた。
 致命傷となっているかもしれない。

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