第12章 鬼と豆まき《壱》✔
「不死川も其処から離れろ! 危険だッ!!」
渦巻く黒い影は、まるでぽっかりと大きな口を開けて喰らおうとする大穴のようだ。
そのすぐ手前で息を呑んでいた実弥に、後方から天元の声が飛ぶ。
振り返り影鬼と彼らの距離を見計らった実弥は、次に自身の右手へと目を向けた。
握られているのは、杏寿郎の竹刀。
「日輪刀の代わりならあらァな」
「お前まさか…ッ」
「時透を連れ戻す」
「不死川!!」
告げると、片腕で目元を守るようにして。
竹刀だけを手に、実弥は巨大な大口の中へと飛び込んだ。