第12章 鬼と豆まき《壱》✔
古い付き合いである杏寿郎は、だからこそすぐにその好意に気付いた。
柱としての経緯は杏寿郎より長い義勇だが深く関わっては来なかった。
故に半信半疑なところもあったが、彼もやはり同じ想いを持っているのか。
(面白ぇ)
だとしたらなんと面白いことか。
クツクツと楽しげに笑みを深める天元に、更に義勇の眉間に皺が寄る。
「敵と馴れ合うつもりはない。さっさと来い」
「やる気になったか?」
その態度が肯定しているようなものだと思ったが、それ以上は追求せず天元もクナイを手に構えた。
相手は自分と等しく長年柱として努めている手練。
蛍や無一郎より格上だ。
(こいつの力量はいまいちわかんねぇんだよな)
率先して打ち込み稽古などしないからこそ、長い間見てきた顔だが謎なことは多かった。
だからこそ興味を惹いたのだ。
この男と一度実践を交えてみたいと思った。
「そうだな。早くしねぇと、蛍の奴が不死川にぶった斬られるだろうし」
その実力が見てみたい一心で、敢えて挑発的に投げ掛ける。
動揺などは一切見せなかったが、義勇の目が天元越しの蛍を映した。
風の呼吸で斬り掛かる実弥に、どうにか回避している蛍は疲労もあるのか午前中より動きが鈍い。
(あれでは、やられるのは時間の問題だ)
ぐ、と根本から折れた竹刀を持つ手に力を込めた。
悠長に構えている暇はない。
(これで最後にする)
確実に相手を仕留める為に、目の前の壁のような忍の姿を見据えた。