第5章 柱《弐》✔
大体、どう考えても蜜璃ちゃんの方が顔面偏差値は上だ。
ついでに体力的な体の造りも、女としての体の造りも、上だ。
そんな美女に可愛い可愛い連呼されると、なんか、こう、ちょっと悲しくな
「さ! 早く入りましょッ!」
駄目だ、全く聞く姿勢じゃない。
強い蜜璃ちゃんの手に押されるままに、着ていた訓練時用の服を脱ぐ。
鬼殺隊の隊服に似ているそれは、西洋の洋服の造りをしていて、体を動かす時には便利なものだ。
ただ私が着ているのは、真っ黒な隊服とは違い真っ白なもの。
流石に同じものは着せられないと思ったんだろうな…鬼だから。
それを他人である人前で脱ぐなんて、初めてのことだからつい身構えてしまう。
のに、当の蜜璃ちゃんはするすると呆気なく抜いでいくからつい見とれ……大きいな!
服の上からでも十分大きな胸だと思ってたけど、脱ぐともっと凄かった。
凄いもの見てしまった。
よかった、女で。ご馳走様です。
「なぁに? じっと見て」
「…蜜璃ちゃんは鬼殺隊の柱なのに…体、凄く綺麗だなって」
無傷とは言わないけど、大きな傷らしい傷は見当たらない。
私は毎日生傷を負っているのに。
やっぱりそれだけ凄い実力者なんだ。そう素直に感想を述べ
「やぁだ! そんなに褒めたら照れちゃうわ!」
「ぶふッ!」
蜜璃ちゃんの照れの平手が思いっきり背中に入った。
背骨がゴキッて言った。
今、ゴキッて言った。
…生傷が耐えないのは、この腕力美女も理由にあるのかもしれない。
「はぁあ〜気持ちいい! 沢山運動した後に入るお風呂は格別よねっ」
「……」
「あっごめんね! 蛍ちゃんは初めてのお風呂なのに…っ」
「ううん」
お風呂は初めてじゃないけど。
もう色々と説明も面倒だから、それでいいです。
お家のお風呂は初めてだし、ね。
二人で体を石鹸で洗った後、汗と共にお湯で流して湯船へと浸かる。
木目の浴槽はきめ細やかで、ほんのりと檜のような良い匂いがした。
二人しかいない所為か、私が行ったことのある銭湯より静かで落ち着いた雰囲気が心地良い。
「蜜璃ちゃんの言う通り、気持ちいい」
肩までしっかり湯船に浸かれば、自然とほろけた笑みが浮かぶ。
ほ、と色んな意味で、息が抜けた。