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いろはに鬼と ちりぬるを【鬼滅の刃】

第12章 鬼と豆まき《壱》✔



「おー。何かやってくれるみたいだな、あの二人」

「そうか! 楽しみだな!」

「ってここで師範の顔は出すなよ? 今お前は隊士で、あいつらは倒すべき鬼なんだからよ」

「承知!」


 と言いつつも笑顔の絶えない杏寿郎には、無邪気な子供のような雰囲気も感じられる。


(真面目な奴だが、根っからの剣士でもあるからな)


 対峙する相手が強ければ強い程、高みへ行けば行く程、己も高揚するのと同じこと。
 その気持ちは天元にも理解できた。


「そうだ煉獄。どうせならアレやろうぜ」

「…アレか?」


 折角の共闘。楽しまずしてどうすると提案する天元に、杏寿郎はふむと考え込んだ。


「折角蛍が阿吽の仲だっつってくれたしな。応えなきゃ男が廃るだろ」

「うむ…そうだな。腕を鈍らせない為にも鍛錬は必要不可欠。久々に試してみるか」

「おし」


 一度視線を交わすのみ。
 既に二人の見据える先には青鬼と黒鬼。
 鬼の二人も意志を固めたのか、どちらともなく向き合う。


「お喋りは済んだか?」

「待っててくれてどうも」

「次はないからな。あんまり遊んでると日が沈む。そんな勝利なんて味気ねぇだろ」

「だったら潔く負けてくれたら嬉しいんだけど、ね!」


 先手を取ったのは鬼側だった。
 蛍は天元へ、無一郎は杏寿郎へ、一直線に突っ込んでいく。
 繋がれている管がある為に、なるべく距離は取ろうとしなかった二人が初めて見せた別行動だった。


「真正面から勝負たぁ気に入った! 煉獄!」

「うむ! 迎え撃つ!!」


 天元と杏寿郎も共に回避の道を選ばなかった。
 ぎりぎりまで蛍を引き付けた天元が、掌に握っていた何かを地面へと投げ付ける。
 ぼふんっとたちまちに白い煙が足元から膨れ上がった。


「忍具使うなんてずる…!」

「お前だって血鬼術使ってんだろ、おあいこだ!」


 一番近くにあった蛍の体は瞬く間に煙幕に包まれた。
 視界は真っ白に覆われ、声でしか天元の存在を確認できない。
 鬼面の内側にまで煙を入れ込まないようにと腕で庇いながら、足元の影を四方八方、円状に広げる。
 しかしつい先程まで目の前にいた天元を捕えることができない。

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