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いろはに鬼と ちりぬるを【鬼滅の刃】

第12章 鬼と豆まき《壱》✔



「ちょっと待って。雛鶴さん達もいるなら、四対四じゃなくなるんじゃ…」

「嫁の命は夫が守るもんだ。俺が三人の命は受け持つ。俺を倒せば雛鶴達の札もやるよ」


 告げた天元が、後方で待機する三人のくノ一に目配せをする。
 応えるように、懐から取り出した手裏剣をまきをが放つ。
 風を切る手裏剣が蛍達の後方へと飛び、カッと小気味良い音を立てて突き刺さったのは、開けた広間の小さな祠だった。

 的確に狙いを定めた手裏剣の刃が、祠の足となっている柱を突く。
 すると、ずずんっと土煙を上げて広間の円状の地面が抉れたのだ。


「な、何…っ」

「言っただろ、あの赤い注連縄より先には入るなって。此処らには至る所に、忍具の仕掛けが眠ってんだよ」

「それ、本当の注意事項だったの!?」

「当然」


 飄々と笑う天元の言う通り、巨大な仕掛けが動いたのだろう。土煙が静まった跡地には、大きな円状の陥没地帯が広がっていた。
 地面が抉れたというよりも、広間の土地だけ段差が出来ているような仕掛けだ。


「共闘戦はあの広間の中で行う。日没までそう時間もねぇしな。逃避はナシだ」

「どちらか勝敗がつくまで戦るってことですか」

「うむ! そういうことになる!!」

「でもまだ平民の札も残ってるのに…」

「何寝惚けたこと言ってやがる。テメェの手で平民共の命は狩り尽くしただろうがァ」

「え?…そうなの?」


 知らず知らずのうちに平民の命は全て手中にしていたのか。
 実弥の指摘に蛍は半信半疑だったが、あの戦隊紹介を激しく嫌がっていた男が、この場で冗談紛いなことを言うとも思えない。
 となると残りの奪う命の札は、この場にいる柱四人のみ。


「じゃああと少しで勝ち…?」

「俺らを前にして勝利宣言とはな。その度胸は気に入っ」

「義勇さん! 時透くん! あと四人だよ! 四人倒せば鬼の勝ち!」

「話聞けコラ」

「まだ気は緩めるな。相手は柱だ」

「俺は別に勝つ気もないけど…」

「そんなこと言わないで、ここまできたんだからっ勝てばお館様の寵愛!」

「あ?」

「む?」

「ぁア?」

「…寵愛?」


 やる気のない無一郎をどうにか引き込もうとする蛍だが、流石に褒美のことを他柱の前で告げる気はなかった。
 しかしそれが裏目に出てしまう。

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