第12章 鬼と豆まき《壱》✔
「なんでってお前、鬼退治する為に決まってんだろ?」
蛍の疑問に応えた天元が、急にその場に躍り出る。
「普段は祭り神の顔を持つ俺だが、今日限りは節分の神だ!!」
「…はい?」
「金色に派手に輝く俺様の姿をとくと見よ! 節分鬼殺しの宇髄天元様とは俺のことだァ!!」
「いや意味わかんない何急に」
「次に煉獄!」
「うむ! 赤き灼熱の炎で鬼を焼き尽くす!! 我こそは隊士が一人、煉獄杏寿郎ッ!!!」
「杏寿郎も何言って」
「次は悲鳴嶼さん!」
「踏み締める硬い大地の如く…漆黒の守りを持つ。悲鳴嶼行冥だ…」
「うわ何か始まったよ大丈夫」
「最後は不死川!」
「切り裂く仁風に舞…って言えるかァア!!!」
「あ。最後まともな人いた」
次々と異名挨拶を始めた彼らに蛍が退きつつあれば、その中に同じ感性の持ち主がいた。
怒りと羞恥で顔を真っ赤にして手に持つ自身の命の札を、盛大に地面に叩き付けるは不死川実弥。
「んだよノリ悪ィなー。ちゃんと練習した通りやれよ」
「練習言うな誰がするかァ!! 餓鬼の戦隊ごっこかよッ!!」
「宇髄! 俺も少し恥ずかしいぞ!!」
「それでも全力でやってくれんだろ。俺お前のそういうとこ好きだわ」
「私は特に…どうともない…」
「ブレねぇよなー本当。流石悲鳴嶼さん。不死川、二人を見習えよ」
「見習えるかァ!!」
どうやら会話の成すところ提案者は天元のようだ。
「何を見せられてるかと思った…皆、頭大丈夫かな」
「今回ばかりは時透くんに同意だよ私…」
「? 名を名乗っただけだろう」
「「……」」
「?」
最後まで不思議そうに頸を傾げる義勇に、思わず蛍と無一郎は沈黙を作る。
今回ばかりは心境が合致するのはゴム管で繋がれた相手のみだ。
「お前らだって色違いの鬼面なんて洒落たもん付けてんだろ。派手さで負けて堪るかよ!」
「そう思ってるのは天元だけだと思う…」
「ごちゃごちゃ細かいこと言うな! 兎にも角にも、偶然にも此処には鬼役が四人に隊士役も四人!」
それも計算の内だったのか。
天元に言われてはっと気付いた蛍の前に、ずいっと近付く2m近い大きな影が覆う。
「故に此処で、共闘戦を申し込む!!」
それは宣戦布告だった。