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いろはに鬼と ちりぬるを【鬼滅の刃】

第12章 鬼と豆まき《壱》✔



「皆色違いの鬼面をしてるのね! 可愛い!」

「あの、蜜璃ちゃ」

「その声は蛍ちゃん!? 黒い鬼面なんて初めて見たわ…っなんだか強そうな姿ね! 格好良いっ♡」

「あ、ありがとう。じゃなくて、その」

「禰豆子ちゃんは何処にいるの? 蛍ちゃんみたいな格好をしてるのかしらっ」

「禰豆子ならあの木箱の中に…じゃなくて」

「冨岡さんと無一郎くんは赤鬼さんと青鬼さんなのね! 素敵っ♡」

「だから、」

「禰豆子ちゃんは何色なのかしらっ!? 桜色の鬼さんだと可愛いのになぁっ♡」

「……」


 きゃあきゃあとハートマークを飛ばす蜜璃の勢いに呑まれ、つい口を閉ざす。
 それでも見過ごせない"それ"にじっと目を向けていれば、蛍の代わりに口を開いた者が。


「というか、なんで西瓜持ってるんですか?」


 ずばり指差し突っ込んだのは、興味の無さそうな顔をした無一郎。
 そんな無一郎でさえも見過ごせなかったのは、愛らしくハートマークを飛ばす蜜璃の腕に抱えられているのが、あまりにも巨大な黒と緑の縞々模様の球体だったからだ。


「あ…ッこっこれ? これはね、隠さん達からお裾分けして貰って…! 決して欲しいなんて自分から言った訳じゃっ」

(言ったんだ)

(言ったんだね)


 立派に熟れた西瓜は、徐々に暑さを増すこの季節なら早めに見かけても可笑しくはない。
 しかしここまで巨大な夏の風物詩である果物は、そうお目にかからないだろう。

 途端に顔を赤くして慌てる蜜璃の腕の中で、くるくると西瓜が回る。
 珍しくも心の内を合致させる無一郎と蛍に、義勇だけは無言で回る西瓜を見やる。
 右に左に手毬のように回りながら、やがては西瓜は蜜璃の背中に隠されてしまった。


「折角のお裾分けだから、痛まないうちに早く食べようかな…って」

「一人で?」


 頸を傾げる無一郎に、かぁっと蜜璃の顔が西瓜の果肉のように濃く色付いた。

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