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いろはに鬼と ちりぬるを【鬼滅の刃】

第12章 鬼と豆まき《壱》✔



「やり方は人それぞれだよ。去年の不死川さんと伊黒さんは、少なくとも再起不能にして取り上げてたから」

「何それ怖い。って再起不能って、攻撃したら駄目なんじゃ」

「してないよ。並の隊士なら、柱の呼吸で気絶させることもできるから」

「…何それ怖い」


 安易に想像できてしまうから尚のこと怖い。
 脳裏に思い浮かべて「うわぁ…」と呟く蛍の隣で、無一郎はいち早くそれに気付いた。


「っ痛い!?」


 何をされたのか蛍には一瞬わからなかった。
 腕輪に繋がった管を強く引かれ、ぐらりと傾く体に何かがぶち当たる。
 ばちばちと音を立てて地面に転がったのは、小豆色の豆類。


「あっ」


 それは節分用だと杏寿郎も話していた、大粒の小豆だった。
 傾いた体を踏ん張り支え、強く管を引いた者を見る。


「待って今。私を盾にした?」

「鬼なら豆くらい、当たってもなんともないでしょ。それよりこっちにも来たよ」


 指差す無一郎に、その指の先を目で追う前に蛍はその場から跳び退いていた。
 腹を狙って打ち込まれた木刀の切っ先が、すれすれで袴に触れる。


「っくそ…!」


 さらりと靡く黒い髪。
 なんとも幸薄そうな塩顔の男が、振り被った木刀を手に悔しそうに眉を潜める。


(あ。この人)


 その男には見覚えがあった。
 何度か禰豆子に会いに蝶屋敷を訪れた際に見かけていた顔だ。


(確か名前は…えっと、)

「村田さん!」

「そうだ村田さ…あ。」

「禰豆子には攻撃しな…っこの匂いは蛍!?」

「炭治郎。ってことは此処、蝶屋敷の敷地内なんだ」


 機能回復訓練を行っていたのか、隊服ではなく蝶屋敷の患者用の服に身を包んだ炭治郎の姿に蛍は辺りを見渡した。
 どうやら最初に辿り着いたのは、胡蝶しのぶが主の蝶屋敷のようだ。


「療養中だろ! 出てくるな!」

「いいえ俺も戦います! だから禰豆子には手を出さないで下さい!」

「禰豆子ってあれか!? あの…っ」


 村田が指差したのは、義勇の背負う木箱。
 しかしそれ以上先は口にしない。
 義勇の顔を見て苦虫を噛み潰したように、歯を食い縛る。

 柱の名を口にするのが怖いのだろうか。
 そう不思議に思う蛍の隣を、ふっと影が掠めた。

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