第12章 鬼と豆まき《壱》✔
そういえば炭治郎は、匂いで相手の感情もわかる…ってまさか。
「優しいだけじゃない、相手を思いやり、慈しみ、大切に思うような」
待ってその先は言わないでなんか嫌な予感が
「慕い愛する、ような」
当たったー!
時透くんだけじゃなく炭治郎にまでバレてた!
そんなにわかり易いのかな私!?
「最初は柱と継子だからかなって思ってたけど…その、匂いがなんだか…甘くて」
「待って炭治郎待ってもういい」
甘いって何。
炭治郎にはどんなふうに匂ってるのなんか恥ずかしい。
「お二人は…仲良し、なんですね」
赤い顔のまま、それでもにっこりと笑った炭治郎の微笑…み…が……なんかもう恥ずかしい。
仲良しとか曖昧に表現して貰ってるその気遣いが尚恥ずかしい。
さっきまで真面目に師と弟子として振舞っていたから余計に恥ずかしい。
「むぅ…よもやよもや、だ…」
「穴があったら入りたい…」
半笑いの杏寿郎の隣で、思わず両手で顔を覆って意気消沈。
本当よもやだよ…まさか十代半ばの男の子に、こうもあっさり杏寿郎との関係を見破られるなんて。
それも二人も。
「こんなことなら前もって言」
「ったら駄目だからね」
「むっ?」
自ら身バレするとか以ての外。
時透くんみたいに良く思わない人は絶対いるから。
幸い時透くんの嫌悪は私だけに向いていたし、杏寿郎は気にしないと笑うだろうけど。
それでも杏寿郎への不要な不信感は、なるべく取り除いておきたい。
バレてしまった以上取り繕う必要はないから、普段の口調で杏寿郎に釘を刺す。
「何故だ?」
「炭治郎みたいに変な気遣わせちゃうでしょ。ごめんね、炭治郎。それ以前に杏寿郎と私は師範と弟子だから。あまり気にしないでね」
「勿論! 俺の方こそ、なんかごめん…っ」
「炭治郎が謝る必要はないよ」
だからどうか、その照れ顔止めて下さい。
どうか寝たら忘れて下さい。
「それとこのことは他言無用でお願いします」
「え? なん」
「他言無用でお願いします!」
「ハイ!」
天元辺りにバレようものなら、盛大にからかわれそうな気がする。
杏寿郎と鬼役一緒にならなくて、正解だったのかもしれない。