第12章 鬼と豆まき《壱》✔
「これで日光の問題は解決したね。他に何か質問はあるかな?」
「あ…あの、」
日光の問題が果たして本当に解決したのか、若干計り兼ねるけど。
それ以上に訊いておかねばと、恐る恐る片手を上げた。
「鬼役とは、一体どのようなことをする役なのでしょうか?」
炭治郎のこの問いは流されてしまった。
今度こそ流されないようにと問い掛ける。
何よりも私が知りたいのはそこだ。
挙手した格好のまま問えば、にっこりとお館様はいつもの笑顔…いやなんかいつもと少し違うような。
兎に角笑顔で、口を開いて下さった。
「それはね、」
「……はぁ…」
「どうした? 溜息をついて」
月明かりの帰り道。
お館様の手前と同じ、杏寿郎の斜め後ろをとぼとぼとついて歩く。
小さな溜息は拾われて、先を歩いていた杏寿郎が不思議そうに振り返った。
事前会議は終わり、帰路へと着く皆と別れて今は杏寿郎と二人きり。
溜息もつきたくなるよ。
だって、
「お館様、鬼役のこと教えてくれなかった…」
にっこりと笑顔で「鬼役の柱に訊くといい」と言われてしまった。
なんで教えてくれなかったのかな…。
あの場で説明すれば、炭治郎も禰豆子も一緒に聞けたのに。
今日はもう遅いからと、帰りに義勇さんともまともに話もできなかったし。
時透くんは当然のように消えていたし。
前途多難。
「そのことか」
「もしかして面倒だって思われたのかな…」
「お館様はそのような御人ではない。然るべき時には確固たる意思の下に行動する御方だ。何かしら理由があって、ああ答えたのだろう」
理由ってどんな?
義勇さんや時透くんに訊いた方がわかり易いってこと?
二人共鬼役は初めてなのに。
「杏寿郎は鬼役したことあるの?」
「ああ! 一昨年、甘露寺と共にこなした!」
「へぇ、蜜璃ちゃんと」
いいな。その鬼役二人がよかった。
どっちと組んでも楽しそうだし。
「いいな…」
「む?」
「私も、二人と組みたかった」
「…うむ。俺もでき得るなら、鬼役としてでも蛍と組みたかったのだが…」
あ、杏寿郎も同じこと思ってくれてたんだ。
足を止める杏寿郎の隣に並べば、残念そうに苦笑してきた。