第12章 鬼と豆まき《壱》✔
「鬼である二人に節分の鬼役を任せれば、本来鬼殺隊が討つべき相手がどんなものなのか、実際に目で見て肌で感じることができる。更にその鬼である二人が柱と組むことによって、私達が蛍と禰豆子を受け入れたことを皆に改めて知らしめることができる」
確かにお館様の言う通りだ。
言葉だけで伝えるより、実際に感じた方が隊士達にも伝わり易いだろう。
でも鬼役って一体何をするの?
災厄とか言われてたけど…。
「では柱の鬼の選別と行こうか。去年鬼役をしたのは実弥と小芭内だったね。今年はその二人以外から選別するとしよう」
うわあ…なんか怖そうな面子。
よかった、不死川と組まされるなんて一番大変そうだし。
禰豆子が組むにしても心配で見てられない。
「では札を配るよ。皆一様に選んで」
お館様の言葉に、にちかちゃん…かな? あれ、かなたちゃん?
そっくりだからどっちがどっちか…とにかくお館様の娘が、朱色の箱を持って柱達の間を回る。
その中に入っている同じく朱色の木札を、それぞれに抜いていく柱達。
「さぁ、皆表を見せて」
お館様の命で一斉に木札が持ち上げられる。
そこには達筆な筆字で【福】と【鬼】と書かれた札が……あ。
鬼と書かれた札は、二枚だけ。
それを手にしていたのは。
「あまね。鬼役は?」
「決まりました」
お館様とあまねさんの声にも、無言で反応を示さない。
等しく黒髪に等しく整った顔立ちの柱二人。
「冨岡様と時透様です」
義勇さんと、時透くんだった。
わぁ…なんだか凄く、静かな鬼役だな。
というかやる気が見えない二人だけど…大丈夫、かな。
「義勇も無一郎も鬼役は初めてだったね。良い機会だ、蛍と禰豆子と共に協力して励むように」
「「御意」」
鬼役を励むって。
そもそも鬼役って何するの?
豆でもぶつけられるの?
節分の鬼役って言えばそうだよね。
鬼の格好をして豆をぶつけられに回るとか…あ、想像したらちょっとしんどそう。
なんせ規模が規模。
此処にいる隊士全員の豆を喰らってたら青痣どころじゃなくなりそうだけど…果たしてそれだけで済むのか若干の不安が残る。
だって隊士役なんているんだから。
鬼を討つ者って言ってたよね?
にちかちゃんかかなたちゃんが。