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いろはに鬼と ちりぬるを【鬼滅の刃】

第12章 鬼と豆まき《壱》✔



「禰豆子。出ておいで」


 大広間の隅。
 畳の上に置かれた木箱の扉が、内側から開く。

 炭治郎の呼びかけに、そっと姿を現したのは鬼の禰豆子。
 周りにいるお館様や九人の柱に気圧されることもなく、炭治郎に寄り添ったまま不思議そうに辺りを見ている。

 鬼になる前の禰豆子は、弟妹の面倒もよく見ていたしっかり者だって炭治郎から聞いたことがある。
 それが鬼化してから朧気な世界にいるかのように、幼児返りしたんだそうだ。
 禰豆子が普通の鬼とは違う特徴の一つ。
 だから鬼狩り幹部達に囲まれても、ぽやっとしたいつもの愛らしい顔で──


「ム!」


 あ。
 目が合った。


「あ! 禰豆子っ?」


 と思ったら炭治郎の静止も流し、整列して座る柱達の前を堂々と横切って、一番端に座っていた私の下へと駆けてくる。

 わぁ可愛い。
 可愛いけど今これいいのかな?
 目の前にお館様がいるけどっ?


「ムゥ〜!」

「わ。っと」

「ご、ごめん蛍…っ」

「う、ううん。私は大丈夫だけど…」


 とりあえず飛び込んできた禰豆子を受け止めることはした。
 現状を理解している炭治郎と私だけが慌てていて、当の禰豆子はすりすりと胸元に頬を擦り寄せてくる。
 相変わらずの可愛さ爆発だな!


「か…ッ♡」


 蜜璃ちゃんも皆まで言わずに盛大な胸きゅんしてる。
 そうだよね可愛いよね凄くわかる。
 でも今は場所が場所だ。


「ふふ。禰豆子は蛍と仲良しなんだね」


 それでもこの部屋で一番偉い人が穏やかに笑ってくれたから助かった。


「これなら安心だ」


 安心?
 何が?


「お館様。そろそろお訊かせ願えますか。この場に鬼二名と平隊士一名を呼んだ訳を」


 最初に切り出したのは不死川。
 なんでこの場にいるんだって、疑問と同時に多少なりとも不満もあるんだろう。
 だって血走った目から届く貫くような視線が痛い。

 それは私も訊きたいです。

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