第12章 鬼と豆まき《壱》✔
「そんなことはないよ。炎柱の継子として日々励んでいると、杏寿郎から聞いている。頑張っているんだね」
「いえ…あの、…はい」
「蛍には期待しているよ」
「あ…ありがとう、ございます」
期待なんてそんな大それたもの向けないで下さい…だってホラ風柱の視線が痛い。
というか柱全員の視線もなんか痛いからこっち見ないで。
「禰豆子も、今夜は姿を見せてくれているかな?」
え?
そんな心の願いも、続くお館様の言葉に消え去る。
禰豆子? 禰豆子って言った? 今。
それ竈門禰豆子のこと?
でも此処には九人の柱と鬼である私だけ。
禰豆子はいない。
「す、すみませんッ!」
そこに見計らったかのように飛び込んできた声と、影が一つ。
「遅れました…ッ」
土下座しそうな勢いで駆け込んできたのは、背中に細長い木箱を背負った額に傷のある少年。
炭治郎だった。
あの木箱には禰豆子が入っているはず。
ということは、お館様は禰豆子も呼んだんだ。
「よかった。これで皆揃ったね」
「お館様、これは一体…?」
「うん。詳しい話は中ですることにしよう」
皆の渦中の疑問を代表して口にした伊黒先生に、お館様は相も変わらず微笑んだまま。
「さぁ可愛い子供達。皆、中へ」
大きな屋敷の中へと、皆を促した。