第12章 鬼と豆まき《壱》✔
「なんでこんな大量の小豆を貰ったの?」
小豆の収穫は冬だったはず。
寒い時期に食べるおしるこ、美味しいんだよね…滅多に機会はなかったけど。
これ茹でたら大量のおしるこ作れるかな。
そんな期待でそわそわしていたら、
「それは節分に使う豆だ!」
「…はい?」
全く予想していなかった答えを返された。
節分?
節分ってあの、二月にする?
…今、六月だけど。
「なんでこの時期に節分なんて言葉が…」
「うむ! 蛍は過去"その時期"には牢獄生活で不参加だったからな。知らなくとも無理はない!」
その時期?
「節分は知っているな?」
「うん。四年に一度の行事でしょ」
確か、閏年(うるうどし)の二月に行う行事。
「そうだ。その名の如く"季節を分ける"ことを意味し、季節の変わり目に豆を撒き食すことによって、人々は厄除けを行ってきた」
豆撒きだよね。
私も姉さんと一緒に歳の数だけお豆を食べたっけ。
「しかし此処鬼殺隊では別の意味で行われる! 邪鬼を払う行いは即ち鬼払い! 鬼を滅する我らが組織の基本となるものだ!」
「…成程」
確かに。
「鬼は外、福は内」っていう有名なかけ声があるくらいだ。
鬼を払う行事は鬼殺隊として一目置くものなのかも。
「なので鬼殺隊本部では毎年行う祭事となる!」
「はい」
「うむ! 発言良し!!」
挙手すれば、即座に大声で指名された。
「でも節分は二月でしょ? なんで今やるの?」
問題はそこだ。
なんでこんな温かくなった時期に?
「今年の如月は、蛍の鬼殺隊での処置の問題があったからな! 余興に時間を費やす暇ではなかった!」
「…成程」
それを言われてしまえば何も反論はできない。
大事な行事の時間を奪ってしまってごめんなさい。
うん、しよう。豆撒き。