第12章 鬼と豆まき《壱》✔
杏寿郎もスイートポテトならそれとなく知識にあったみたいで、間違えを伝えたらなんなく受け止めていた。
私が間違えた所為で勘違いさせたみたいで、それがまた恥ずかしい。
「あれがまた食べたいんだが」
「あれはご飯じゃありません」
お菓子です。
そして今から食べるのは晩御飯です。
「ならば、また蛍の気が乗った時にでも作ってくれないか?」
「お誕生日用の特別なお菓子なのに?」
「…む…」
あ。少ししゅんとした。
余程あのお菓子が気に入ったんだ。
…それだけ嬉しかったのかな。
「…わかったよ」
「!」
「また後藤さん達にさつまいもを多く仕入れて貰ったらね」
「うむ!」
なんだかんだ弱いなぁ私…こういう感情表現は真っ直ぐ素直な杏寿郎だから、つい可愛いと思ってしまうというか…これも惚れた弱みなのかな。
「では今日は別のさつまいも料理を頂くとしよう!」
「そうだなぁ、さつまいもを使うなら──…」
今更自問自答する気もない。
嬉しそうに台所へと先に下りる杏寿郎に続けば、行動だけで言葉は続かなかった。
「……」
「どうした? 蛍」
「…いや…」
どうしたもこうしたも。
「杏寿郎の後ろにある、それ何」
冷蔵庫の前に立つ杏寿郎の、その背後。
常温保存できる食材が置かれた棚の上に、どどんと主張を放つ大きな麻袋が。
さつまいもを入れていた麻袋より遥かに大きい。
何それ。
昨日までそんなものなかったはずだけど。
「ああ、これは昼間隠達が届けてくれたものだ!」
「へぇー…で、中身は?」
其処に置いてあるってことは、食材?
興味本位で近付けば、麻袋から感じるずっしりとした重量感。
重いものでも入ってるのかな…。
「お館様が収穫期からしっかり保存して下さったお陰で丸々と肥えている!」
「へぇー…何が?」
麻袋の口紐を解いて中を覗き込む。
見えたのは、杏寿郎の言う通りまるっとした艶々の…
「小豆?」
小豆色の豆類。
うん、小豆だ。
確かによくよく見れば大粒な気も。
立派な小豆だ。