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いろはに鬼と ちりぬるを【鬼滅の刃】

第11章 鬼さん、こちら。✔



「作れるようになったら、杏寿郎のお誕生日特別料理にしよっか」

「すいーたぽっとをか?」

「うん。すいーたぽっとを」


 さつまいものお菓子なら、杏寿郎も好きになりそうだし。
 何よりあの照れ笑う杏寿郎の嬉しそうな顔がまた見たいから。


「そしたら毎年お祝いが楽しみになるよね」


 もっと自分の誕生日を重要視してくれるかもしれないし。
 拳を握ってやる気を見せて笑いかければ、不意に見下ろしてくる目がじっと──近い。

 そう思った時には、もうその熱に触れていた。

 唇を掠める仄かな熱。
 近過ぎる杏寿郎の顔が見えない。
 やがてゆっくりと顔を退く杏寿郎に、ぽかんと見上げていた自分の顔に熱が宿る。
 まるでその唇から伝い広がるように。


「っ」


 え。というか、え?
 今、凄く普通に…口付け、られた?


「な、ん」

「これからは、こうして触れても構わないだろうか?」


 悪気なんて全く無い穏やかな笑顔で問う杏寿郎に、顔の熱が更に増す。
 そういうことは、やる前に言うことでは…!?


「そっ…ういうことは、先に言って…」

「む。そうか。では先程の蛍が堪らなく愛いと感じたので口」

「やっぱり言わなくていい!」


 言葉の暴力!
 羞恥心への破壊力が凄いやめて!


「わかった。では言わずにしよう!」

「いや…っちょ、待っ」


 なんかそれも違う気がするけど否定するとまた繰り返す気がする。
 して欲しくない訳じゃないんだけどそうも正面から宣言されると恥ずか死ぬというかなんというか何これ。
 決してして欲しくない訳じゃないんだけども!

 何これ。


「…鬼として不甲斐なし…」


 さっきの杏寿郎と真逆の立場。
 鬼の癖して口付け一つで慌てるとか。
 というか人間の時にも仕事であれこれしてたのに。
 こんな些細なことで赤面するような清い心なんてしてたっけ自分?

 思わず片手でぺたりと顔を覆っていれば、杏寿郎が気遣ってくれたのか。


「君は他とは非なる鬼。喰らう側は俺だ、案ずるな」


 確かに他の鬼とは違うって言ってくれたけど、まだ私その他の鬼のことよく知らな……待って今なんて?

 喰らう側は俺?
 杏寿郎が?
 喰らう側?
 誰を?

 …誰を?

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