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いろはに鬼と ちりぬるを【鬼滅の刃】

第4章 柱《壱》



❉  ❉  ❉

「あーあ。いいのかね、あんな大事なことをあっさり認めちまって」


 暗い通路を通り過ぎ、月明かりに照らされた夜道に出る。
 狭い通路を過ぎ行き伸びをしながらぼやく天元に、続く杏寿郎は変わらぬ態度を示していた。


「無論、お館様にご報告をした後に稽古は始めるつもりだ! お館様も認めて下さるだろう!」

「ふふ、蛍ちゃんと稽古なんて楽しそうっ」

「甘露寺も共にするか? 以前のように!」

「えっいいんですか!?」


「おいおい…」


 元、師と弟子。
 だからこそ波長が合うのか、会話に置いていかれている天元は呆れた目で二人を見やった。


「大体、お前もあそこで許すからこんなことになったんだろ」

「…許した訳じゃない」


 最後に通路を後にした義勇へと目線を寄越せば、それは交わることなく否定される。


「呼吸法は人が鬼を滅する為に習得した術。それを少しでも悪行に使う素振りを見せれば、俺が斬る」

「ふぅん…そういやお前、あの鬼の命を預かってるって言ってたか」

「むぅ。お館様に頼み申すついでに、訊いてみるとしよう。何故冨岡と俺にそのような約束事をなされたのか」


 一度浮いた疑問は離れず。
 何故義勇と契を交わし、杏寿郎と約束をしたのか。
 己の顎に手を掛けてうむと呟く杏寿郎の前を、一つの影が進み出た。


「そのことなんだけど、」


 軽い足取りで先を進むは甘露寺蜜璃。
 振り返りにこりと笑うと、彼女はあっさりとその"答え"を口にした。


「多分、お館様は知っていたんじゃないかしら」

「と、いうと?」

「煉獄さんが、蛍ちゃんを斬首しないこと」

「……むぅ?」


 顎に手を掛けたまま頸を傾げる杏寿郎に、同じく頸を傾げて蜜璃が緊張感のない笑顔を見せる。


「私、話せば話す程、蛍ちゃんのこと好きになったもの。困難な道でも、蛍ちゃんがまた生きようとしてくれたらいいなって思ったわ。それをきっとお館様もわかってたから、煉獄さんに蛍ちゃんを見るきっかけを与えたんじゃないかしら?って」

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