第11章 鬼さん、こちら。✔
「でも炭治郎なら安心かな…私、夫にするなら炭治郎みたいな男がいい」
「おっ…!?」
あ、カナヲちゃんの顔がぼわんと真っ赤に。
ごめん、夫は早かったか。
でもこれは至って本音。
炭治郎なら伴侶となる妻を大事にしそうだし、誰とでも人当たりは良さそうだし、貧しくたって笑って暮らしていけそうな気がする。
何より禰豆子の為に鬼殺隊の剣士になった。
家族を心底思いやれる人だ。
「善逸は優しいけど辺り構わず女の子のお尻追い掛けるから心配だし…伊之助はまずあの女子に対する粗暴さをどうにかしないと」
「でも伊之助さんは、本当に乱暴なことはしないわ」
「ん?」
「確かに訓練時の手つきは荒かったけど、本気で嫌がればすぐにやめてくれたし…」
「そうなの?」
意外だった。
アオイがそんなこと言うなんて。
私はアオイとの訓練を見ていないから想像つかなかったけど、あの伊之助が。
私には本気で殴りに来てた伊之助が?
「……ふむ」
「…何よその顔」
顎に手を当てて、まじまじとアオイの顔を見る。
待てよ…もしや…ここにも春の予感?
「アオイは引っ張っていってくれる男が好み?」
「は? 何言って…」
「伊之助は確かに粗暴だけど、感情には素直だから上手く促してあげれば良い男に育つと思う」
一番伸び代ありそうだし。
「いいね! 私は応援するよっ」
「だから何言ってんの!? 勘違いしないでッ」
いやあ、そんな赤い顔で捲し立てられても。
お姉さん、きゅんきゅんします。
「そんなに頑なに否定しなくても。年頃の女の子なら恋愛の一つや二つ、するものでしょ?」
天元も一夫多妻してるから、鬼殺隊に恋愛禁止令はないだろうし。
いいんじゃないかな、好きな人を作ったって。
「じゃあ蛍さんも?」
「え?」
「恋愛の一つや二つ、されたんですか?」
「え」
「気になります!」
墓穴を掘るとはこのことか。
きらきらした目で見てくるすみちゃん達の純粋な瞳に、口を閉じてしまった。
これは…嘘がつけない目だ。
どうしよう。
「いや…私は別に…」
「いないんですか? 気になる殿方」
え。いや…それは。