第11章 鬼さん、こちら。✔
「蛍さん、目がとっても輝いてます…」
「きらきらしてます…」
「楽しそうです…」
「だって可愛い女の子の色恋とか知りたくない? きゅんとしない?」
鬼狩りをする組織でも色恋なんて発生するんだ。
何それ素敵。ぜひ拝みたい。
「カナヲさんが、少し前に炭治郎さんと中庭で話しているのを見かけて」
「その時、いつもカナヲさんが物事を決める時に使っている銅貨があるんですが」
「それを何故か炭治郎さんが持っていて、カナヲさんに手渡したら…」
「ふんふん」
それで?
「大事そうに、こう、ぎゅっと」
「銅貨を抱きしめていたんです」
「可愛らしくないですか?」
「か…っ」
可愛い何それ!
銅貨って、あの銅貨でしょ?
物事がふた手に別れていた時、銅貨の裏表でカナヲちゃんは決めてるっていうあの。
それを炭治郎が持っていた?
それを大事そうにカナヲちゃんが抱きしめた?
何があったんだそこで。
知りたい。
「…何話してるのそこ」
すみちゃん達とわいわいしてたら、同じ浴槽に入っている身。
小声でもアオイに知られてしまった。
そして、
「…っ」
当事者のカナヲちゃんにも。
さっきより赤く染めた顔を俯き…え何あれ可愛いんだけど何あれ。
もうこれは図星かな? 図星なのかな?
炭治郎に「こ」の字なのかな?
ええ…お姉さん応援したい。
「私は全力で応援するよ、カナヲちゃん」
「!?」
ぽんと肩に手をおけば、びくりと上がった真っ赤な顔があたふたあたふた。
感情がないなんて嘘だ、中身はとっても可愛い女の子だ。
全力で後押ししたくなる。
「それで炭治郎のどこが気に入ったの? やっぱりあの誠実さ? 優しいところ? 長男気質?」
「…っ」
「ちょっと蛍! カナヲが困ってるでしょ!」
ここぞとばかりに話を聞こうとすれば、間を割ってアオイが入ってきた。
あ、すっかりお姉さんの顔してる。
これは手強いな…。
「アオイは気にならないの? カナヲちゃんの恋路」
「それは当人が決めることで、他人がとやかく言うことじゃないからっ」
おお正論。
「でも大事な妹が変な男に引っかからないか、心配にならない?」
「…それは…」
だよね。心配だよね。