第11章 鬼さん、こちら。✔
「はぁ? なんでオレが」
「親分でしょ、炭治郎と善逸の」
「ハッ、いっくらお前が大親分だろうと、そんな命令聞くかよ!」
じゃあなんの為の肩書きなのそれ。意味なし。
…それなら。
「…そっか。できないんだね…親分なのに」
ぴくりと、猪の被り物の耳が動かないはずなのに動いた(ような気がした)。
「子分一人まともに管理できないんだね…親分なのに」
「っ」
「これならもう子分の炭治郎の方が」
「はぁあ"ん!? オレ様にできないはずねぇだろ!! 子分一人見張るくらい朝飯前だわ!」
「本当?」
「ったり前だろ!」
「流石親分!」
ちょろい。ちょろ過ぎる。
いくら山暮らしでほとんど人との関わりがなかったとはいえ、ちょろ過ぎる。
都会に出すの心配になるよ大親分は。
「じゃあ皆で温まってさっぱりして本日の訓練終了!ってことで」
先にお風呂を借りることを男子陣に断れば、炭治郎は笑顔で、善逸は挙動不審に、そんな善逸の襟首を伊之助が捕まえた状態で、送り出された。
「皆でお風呂なんて久しぶりです!」
「そうなの?」
「カナヲさんがしのぶさまの継子になる前は、時々…」
「その後はカナヲさんも忙しくなられましたので」
成程。
すみちゃん達の言葉に左手の先を見れば、大人しくついてくるカナヲちゃんがいつもの薄い笑み…を浮かべてはいなかった。
俯きがちに、手を引かれてる。
あれ。
「もしかして…嫌だった? お風呂」
カナヲちゃんをお風呂に入れるのが一番の目的だから、入ってもらわなきゃ困るんだけど。
恐る恐る問えば、上がった頭がふるふると頸を横に振る。
それからはっとしたようにまた下へと下がる目線。
…なんだろう。
無表情なカナヲちゃんよりはずっと可愛いけど。
なんだか、善逸とまではいかないけど挙動不審なような…。
一緒に入るのが恥ずかしいのかな…でもそんなこと訊けばもっと恥ずかしくなるだろうし。
ここは黙っておこう。
右手の禰豆子は凄く嬉しそうに足取り跳ねてるし、取り止めるのは気が引ける。
というか両手に花とは、正にこのことだな。