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いろはに鬼と ちりぬるを【鬼滅の刃】

第4章 柱《壱》



「む!?」

「はぁ?」

「まぁ!」

「……」


 私の宣言に、目の前の反応はそれぞれ違った。
 冨岡義勇だけ何も発さなかったけれど…その目は私を凝視していた。

 やっぱり、可笑しな、ことかな。


「おいおいおい何言ってんだ自分の言ってる意味わかってんのか? お前は鬼で」

「よい心掛けだ! 憶えたくば俺が教えよう!」

「煉獄!? 何言ってんのお前!」


 やっぱり忍者は速攻で否定してきたけど、でも杏寿郎が速攻で肯定してくれたから場の空気が一気に騒がしくなる。


「彩千代少女は己の制御の為に呼吸を憶えようと思ったのだろう?」


 その通りだと頷けば、うむ!と胸を張って杏寿郎は笑顔を浮かべた。


「ならば問題無し!」

「問題なくねーよ! 鬼が呼吸を使うなんて聞いたことねぇぞ!」

「じゃあ蛍ちゃんが鬼の中で初なのねッふふ、私応援するわっ」

「これじゃ埒が明かねぇ…っおい冨岡! お前も黙ってないでこいつらになんとか言えッ」

「……」


 忍者の焚き付けに、冨岡義勇が初めてこちらへ向き直る。
 杏寿郎と蜜璃ちゃんは賛成してくれてるみたいだけど…彼はどうだろうか。
 私の命を預かっているのは彼だから、否定されてしまうと強くは返せないかもしれない。


「"呼吸法"は、人が鬼と渡り合う為に身に付けた術だ。それを鬼であるお前に、教えるに値するものは?」


 淡々と静かに、だけど核心を突いて問われる。
 私も私の立場を思えば、無謀なことを言っているのはわかっている。
 それでも…これしか他に、道が見つからないのなら。


「…契を、守る」


 この人は、私の命を保証してくれた。
 杏寿郎のように、きっとそれは大きな対価を払ったものだ。
 それならそのお館様との契を、私が壊しちゃいけない。


「お館様との"信頼"を、守り通す」


 守りたい。
 守らなきゃ。

 そうしたらいつか私も、その目に見えない絆を誰かと紡ぎ合わせることができるかもしれない。
 そうしたら、少しでも近付けるかもしれない。

 姉さんと同じ──"人"に。

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