第11章 鬼さん、こちら。✔
ダンッ!
「ッいだっ!」
「ふぅ。はい一本」
それから更に一刻。
大外刈(おおそとがり)で投げ飛ばした炭治郎が、床に背中から落ちる。
額に滲む汗を袖で払いながら、周りに倒れている屍三体を見下ろした。
…待って何この状況。
鬼ごっこやってたはずなのに、なんで途中から組手になってるの。
それも伊之助だけじゃなく炭治郎と善逸まで。
勇んで来るからつい全員叩きのめしてしまった…善逸だけはすんごい笑顔で抱き付こうとしてきたけど。
あれ絶対勝負目的じゃないな。
つい一番遠くまで投げ飛ばしてしまった。
「畜生ォ…もう一回だ! もう一回勝負しろ!!」
「その台詞もう四度目だから」
三回も勝負したでしょ?
そして三回共負けたでしょ。
いい加減諦めて伊之助。
というかそのやる気はカナヲちゃん相手に出してくれないかな?
「鬼に負けるなんて…ッ」
「鬼じゃない彩千代蛍。はい復唱」
「……」
「復唱」
「っく…ほ…ほたる…」
よし。
「それと禰豆子は私の直属配下にするから。子分だからってこき使っちゃ駄目だよ」
「何ィ!? あいつはオレの子分その三で…!」
「じゃあ私は伊之助の?」
「…ぐ」
「何?」
「…大親分デス」
「よろしい」
親分の座はどうしても譲りたくなかった伊之助の、最大の譲歩がこれ。
大親分なんて肩書きは正直要らないけど、これで禰豆子が伊之助にこき使われなくて済むならいい。
我の強い伊之助だけど、彼の世界で強さは絶対的な基準なんだろう。
自分より上と認めれば、私の鬼呼びもやめてくれた。
渋々だけど。
呼び捨てだけど。
配下として敬う気は全くないみたいだけど。
まぁいっか。