第11章 鬼さん、こちら。✔
「まぁまぁ。休憩時間なら好きに雑談くらい、いいんじゃない? さ、アオイ」
「…何その腕」
「や、アオイは前回会えなかったから十日ぶりくらいかなって。おいで〜」
「だから子供扱いしないでってば!」
アオイにも両腕を広げて呼べば、耳まで真っ赤にして怒鳴られた。
怒るのは目に見えてたけど、その赤い耳を隠せないから可愛いんだよね。
なんて言うか、素直じゃないにゃんこみたいな感じ。
そんなこと言ったらまた怒鳴られそうだけど。
「もう休憩時間は終わりです! 続きをしますので皆さん配置について!!」
「えぇえ〜!? もう終わり!? 俺全然休めてないぃ…」
「えぇえ〜もう? 私全然アオイと絡めてない…」
「蛍は黙って!!」
「ハイ」
ごめんなさい。
でもアオイとこうして素で向き合えるのが嬉しくって。つい。
「でも前は善逸、訓練が楽しいって言ってなかったっけ?」
「アオイちゃんを相手にしてる時は楽しかったんだよ…幸せだったよ最高だったよ…」
あんなに女の子と絡めるってほくほくで話してたのに。
初めて機能回復訓練を見学するから詳細はわからないけれど、どうやらアオイに勝った炭治郎達は次の相手で苦戦を強いられているらしい。
「カナヲも準備して」
それが、あのカナヲちゃん。
アオイの呼び掛けに頷くだけの応答で、沢山の湯呑みが置かれた机の前に座る。
湯呑みの中には強烈な激臭がする薬湯が入っているらしい。
向き合った状態でお互いにその湯呑みを奪い合い、薬湯を先にかけられた方が負け。
その勝負でことごとく全敗なんだとか。
条件反射と見極めの訓練かな…野生児の伊之助が一番そういうの得意そうだけど、それをも上回るって。
やっぱりカナヲちゃんは胡蝶の継子なだけある。
「よ、よし! 最初は伊之助行けよ!」
「はぁあ"ん!? さっきはオレが先陣切ってやっただろ! 次はお前が行け紋逸(もんいつ)!」
「紋逸じゃねぇよ善逸だよ!!」
誰が最初に犠牲になるかで言い合う黒と金の頭を交互に見ながら、つい興味が向く。
そんなにカナヲちゃんって強いんだ…。
私の指もすっぱり斬ってくれたしね。
「あ、やなこと思い出してしまった」
「ム?」